自立生活センターHANDS世田谷
山口成子


<岡山の暑い午後~なにかあったら困る!?>



先日、全国自立生活センター協議会の総会が岡山で開催された。
協議会では、地方の自立生活運動を推進するために、総会を1年おきに地方で開催している。
それに出席するため、仲間3人と介助者3人で、新幹線に乗り込んだ。梅雨時にもかかわらず晴天に恵まれ、一泊二日の交流会、総会、分科会は無事に終了した。あとの残り少ない時間を岡山の観光に少しでも当てようと、心はずませて、総会の会場を後にした。昼食もとっていなかったし、日中のさなか2キロ近く歩いたので、昼食をかねて一休みしようと、駅の近くで入れるお店を探し歩いたが、入れるお店がなかなか見つからなかった。やっとの思いで入れそうな蕎麦屋さんを見つけたので、みんなほっとして喜んだ。奥まっていたが広めで、他の客はあまりいなかった。ここだったら大丈夫、一休みしようと、店のなかにはいった瞬間、店員の冷たい視線を感じた。すると、店主のような人が出てきて、「悪いけど、うちはダメなんだよ。」と言うのである。

一瞬、頭の中が白くなった。次の瞬間、昔、よく出会った光景を思い出した。「車いす二台なんですけど、そのうちの一台は席に乗り移ることができるし、あとは介助の人ですから。それでもダメですか?」すると店主は、「そういうことではなくて、とにかくうちはダメなんだよ。お客さんになにかあったら困るからね。」と言った。お店を出るとき、店先に「バギーはお店には入らないで下さい。」と書いてあったのが目にとまった。「『なにかあったら』、の『なにか』ってなんですか?」と、私一人だったら詰め寄るところだったが、その時は疲れていたので、おとなしく引き下がった。

あなたは、この「なにか」をどのように受け止めるだろうか?物理的なバリアはお金があれば解決することである。しかし、心のバリアは、まだまだ地方へ行けば行くほど厚く存在する問題だ。バリアフリーの問題は、これからの高齢社会では誰もが抱えていくことだと言えるであろう。一人ひとりが意識を高めていくことが、心のバリアをほぐしていくことになると、改めて感じた岡山だった。

(1998年)
※山口はHANDS世田谷の創設者の一人。1999年NPO法人化時理事長、2001年永眠。
※上記総会は1998年5月30-31日。